
Espresso Martini (エスプレッソマティーニ)
エスプレッソマティーニは、ホテルバーを 90 秒だけコーヒーバーに変える一杯です。ウォッカ、コーヒーリキュール、少量のシロップ、そして淹れたてのエスプレッソ 1 ショット。氷とともに強くシェイクし、冷やしたグラスにダブルストレインすると、表面に密度の高い薄茶色の泡が立ち、その上にコーヒー豆が 3 粒浮かびます。すべてはタイミング次第です。エスプレッソはシェイカーに入る瞬間まで熱く、クレマを保っていなければなりません。泡を作るのは、そのクレマとコーヒーの油分だからです。10 分置いたコーヒーで作れば、泡も香りもなく、甘い茶色の液体が残るだけ。正しく作れば、ひと口の中に苦みと甘みが同居し、質感は絹のようになめらか、グラスに結露が浮くほど冷たい。2020 年代に入って再び世界で最も注文されるカクテルのひとつになりました。ホテルバーでは食後の定番として、デザートと夜の続きをつなぐ一杯です。
レシピ仕様
| 材料 | 分量 | 役割 |
|---|---|---|
| ウォッカ | 50 ml | 強さと、コーヒーを主役にするための無色のキャンバス。40 度のニュートラルなものを、常温か軽く冷やした状態で。冷凍庫からは出さないこと。冷えすぎたウォッカはシェイクと泡立ちを遅らせる |
| コーヒーリキュール | 30 ml | 焙煎の深み、ボディ、そして甘みのおよそ半分。色も補い、濁った泥色ではなく濃い茶色に見せる |
| シュガーシロップ(1:1) | 10 ml | エスプレッソの苦みの角を丸める。1:1 シロップ 10 ml は砂糖およそ 5 g。正しく抽出したショットの釣り合いには十分で、デザートにはならない量 |
| 淹れたてのエスプレッソ | 1 ショット、約 30 ml。粉量 18〜20 g、抽出 25〜30 秒 | 味、香り、泡のすべて。オーダーごとに抽出し、熱いうちに 60 秒以内にシェイクして、クレマと溶け込んだ CO2 をシェイカーまで運ぶ |
| 氷 | 約 3 cm 角を 5〜6 個、シェイカーの 3 分の 2 | 熱いショットを数秒で 0 ℃近くまで下げ、コーヒーの油分に空気を打ち込む攪拌力になる。氷が少ないとぬるく、クラッシュアイスは加水過多 |
| コーヒー豆 | 焙煎した丸ごとの豆 3 粒 | 泡の上の香りであり、この一杯の視覚的な署名。泡が落ち着いてからのせると沈まずに浮く |
技法
- クープグラスまたはマティーニグラスを冷凍庫で 10 分以上冷やす。無理なら作業中に氷水を張っておくぬるいグラスは 1 分足らずで泡を潰す。この一杯の見た目は、冷たい表面の上の密な泡がすべて
- エスプレッソは最後、シェイクの直前に抽出する。粉量 18〜20 g、抽出 25〜30 秒、約 30 ml、シングルかダブルかは店の基準で新鮮なクレマは溶け込んだ CO2 と油分を抱えている。抽出から 2〜3 分でガスの大半が抜け、泡が立たなくなる。冷めた、あるいは古いショットは味も鈍く、鋭い苦みが出る
- ジガーでウォッカ 50 ml、コーヒーリキュール 30 ml、シュガーシロップ 10 ml をシェイカーに量り入れ、熱いエスプレッソをそのまま注ぐIBA 規定はシェイカー前提で、グラスでビルドする工程はない。ショットを最後に入れれば氷が来るまで熱を保て、シロップが底に沈むのも防げる
- 約 3 cm の氷を 5〜6 個入れ、ティンの外側が白く曇るまで 12〜15 秒、強くシェイクするハードシェイクは 3 つの仕事を同時にこなす。熱いショットを約 0〜2 ℃まで下げ、約 20% 加水して 18〜20 度に落とし、コーヒーの油分とクレマに空気を打ち込んで泡を作る。短い、弱いシェイクでは薄くぬるい、泡のない一杯になる。ドライシェイクは不要。クレマと油分だけで泡は立つ
- ホーソンストレーナーとファインストレーナーでダブルストレインし、ティンをリムから約 10 cm 上に構えて冷えたグラスへ注ぐハードシェイクで砕けた氷片は泡を壊し、白い斑点になって浮く。細かく漉せば約 1 cm の均一で途切れない泡になり、落差が泡を持ち上げる
- 20 秒待ってから、泡の中央にコーヒー豆を 3 粒置く気泡同士が結びついて泡が締まる。早く置くと豆はそのまま沈む。良い泡は 1 分以上持ち、テーブルまで運ぶ時間に十分
- すぐに提供する。氷なしのストレートアップで。ゲストが興味を示せばエスプレッソについてひと言添える温度の対比がこの一杯の核心。熱いコーヒーが氷のように冷たくなり、その上に温かい香りが残る。カウンターに置いたまま 30 秒経つごとに泡と冷たさが失われる
サービス
由来
エスプレッソマティーニは 1983 年、ロンドンのバーテンダー Dick Bradsell がソーホーの Old Compton Street にあった Soho Brasserie で生み出しました。ただし彼の娘を含む一部の証言では 1985 年ごろとされています。Bradsell 自身が語った経緯はこうです。若い女性客が、目を覚まさせて、そのあと元気が出るような一杯を頼んだ。コーヒーマシンは彼のステーションのすぐ隣にあった。そこで淹れたてのエスプレッソをウォッカ、少量のシュガーシロップ、コーヒーリキュールとシェイクし、ロックグラスの氷の上に注いで、コーヒー豆を 3 粒のせた。名前は Vodka Espresso でした。呼び名が変わったのは 1990 年代後半。ステム付きグラスの酒を何でも「〜ティーニ」と呼ぶロンドンの流行の中で、この一杯は V 字のマティーニグラスに氷なしで出されるようになり、1997 年 9 月に開店したバー Match EC1 で広く知られるようになります。1998 年から 2003 年まで Bradsell が働いたノッティングヒルの Pharmacy、Damien Hirst がデザインしたバーでは、同じ一杯が Pharmaceutical Stimulant の名でメニューに載っていました。Bradsell は 2016 年に亡くなりましたが、そのときこの一杯はすでに彼の名とともに世界中に広まっていました。3 粒の豆は健康、富、幸福を表すと言われ、これはイタリアのサンブーカの飲み方から借りた慣習です。国際バーテンダー協会(IBA)はエスプレッソマティーニを New Era のカテゴリーに掲載しており、規定はウォッカ 50 ml、コーヒーリキュール 30 ml、シュガーシロップ 10 ml、濃いエスプレッソ 1 杯です。
味わいとボディ
最初のひと口は冷たく苦いエスプレッソ。絹のような泡に包まれ、グラスに 1 滴も入っていないのにミルクのように感じる。焙煎したコーヒー、ダークチョコレート、わずかなキャラメルはリキュール由来。ウォッカは清潔でドライな余韻に隠れ、全体をくどくさせない。甘みは苦みのすぐ下に収まるべきで、決して上に出てはいけない。最初に浮かぶ言葉が「デザート」なら、シロップが多すぎるか抽出不足。ボディはミディアム、余韻はやや長く、約 20 秒の温かさ。淹れたてのコーヒーの香りは、グラスが口に触れる前に鼻へ届くべきもの。色は濃い茶色の液体の上に、約 1 cm の均一なカプチーノ色の泡。泡が暗い、まだら、あるいは無いなら、エスプレッソが古かった証拠。
相性のよい料理
- カカオ 70% 以上のダークチョコレート。苦みとの王道の組み合わせ
- ティラミス。コーヒーにコーヒーを重ねる
- 甘いリコッタを詰めたカンノーリ
- アフォガート。テーブルの両側にコーヒーを置きたいゲストに
- 18〜24 か月熟成のパルミジャーノなど長期熟成のハードチーズ
- アーモンドのビスコッティ、または塩キャラメルのデザート
ホテルバーの定番アレンジ
- Vodka Espresso(ウォッカエスプレッソ) · 1983 年のオリジナル。同じくシェイクした酒を、氷なしではなくロックグラスの新しい氷の上に注ぐ。より長く冷たく、加水はわずかに多い。Bradsell が最初に作った形
- Cold Brew Espresso Martini(コールドブリュー) · エスプレッソの代わりにコールドブリュー濃縮液 60 ml。コールドブリューにはクレマがないので、リバースドライシェイクで泡を作る。まず氷とシェイクし、氷を漉して、氷なしでさらに 10 秒シェイク。よりなめらかで酸味が低く、マシンのない大規模イベントで格段に扱いやすい
- ソルテッドキャラメル/バニラ エスプレッソマティーニ · シュガーシロップをフレーバーシロップ 10 ml に置き換える。塩キャラメルはデザートと合わせる際に多くのゲストが好む塩気の輪郭を加え、バニラは苦みを和らげる。10 ml を守ること。超えると甘い酒になる
- ラム/テキーラ エスプレッソマティーニ · ベースを同じ 50 ml で入れ替える。熟成ラムはホテルバーでよくあるアレンジで、糖蜜と樽の香りが加わる。レポサドテキーラはよりドライで青みのある骨格を与える。泡も手順も変わらない
- デカフェ/ノンアルコール エスプレッソマティーニ · 夜遅いゲストにはデカフェのエスプレッソで標準規定どおりに。ノンアルコールはウォッカを抜き、淹れたてのエスプレッソかコールドブリュー 60 ml とコーヒーコーディアル 30 ml を同じ方法でシェイクする。コーヒーの油分で泡はちゃんと立つ
よくある失敗
- 冷めた、あるいは古いエスプレッソを使う。数分でガスとクレマは抜け、泡は立たず、コーヒーは鈍く鋭い苦みになる。ショットは最後に抽出し、60 秒以内にシェイク
- インスタントコーヒーやクレマのないカプセルコーヒーを使う。泡立ちが悪く味が平坦。マシンがなければコールドブリュー濃縮液とリバースドライシェイクに切り替える
- シロップの入れすぎ。規定は 1:1 シロップ 10 ml。20 ml では酒がデザートになり、コーヒーが埋もれる
- ファインストレーナーを省く。ハードシェイクの氷片が泡をまだらに崩し、白い点になって浮く
- シェイクが短い、弱い、そしてすぐに豆をのせる。短いシェイクではぬるく薄く泡のない一杯になり、泡が 20 秒落ち着く前に置いた豆は沈んで見えなくなる
バーテンダーノート
ホテルバーにおいてこの一杯の品質を決めるボトルネックはシェイクではなくエスプレッソのショットです。だからスタッフはシェイカーより先にマシンで訓練します。粉量 18〜20 g、抽出 25〜30 秒、グループヘッドは清潔に、そしてショットを引くのはシェイカーにウォッカ、リキュール、シロップが入ってからだけ。営業中は冷凍庫にクープグラスのラックを常備してください。ぬるいグラス 1 脚がすべてを台無しにします。100 名の宴会やレセプションには現実的な方法が 2 つあります。ひとつは、エスプレッソを事前に抽出し、氷水のバットで急冷して加熱の進行を止め、蓋をして冷蔵、2 時間以内に使い切ること。泡は淹れたてより少し軽くなるので、シェイクを 2〜3 秒長くします。もうひとつは、コールドブリュー濃縮液を 1 杯 60 ml に切り替え、リバースドライシェイクで泡を作ること。マシン不要で、バーテンダー 2 名なら 100 杯を約 40 分で出せます。ウォッカ、リキュール、シロップは 50/30/10 で事前にバッチし、1 杯 90 ml を注いでコーヒーだけオーダーごとに加えます。21 時以降は聞かれる前にデカフェを提案してください。この一杯は欲しいがカフェインはいらない、というゲストは多いものです。最後に、3 粒の豆はゲストの目の前で置き、健康、富、幸福の話をひと言。10 秒の会話ですが、ゲストは覚えていて、写真に撮ります。
AI バーテンダーにぴったりの一杯を選んでもらう
写真 1 枚。AI が気分を読み取り、20 杯のクラシックから選びます。
よくある質問
IBA 公式のエスプレッソマティーニのレシピは
ウォッカ 50 ml、コーヒーリキュール 30 ml、シュガーシロップ 10 ml、濃いエスプレッソ 1 杯。IBA の手順は、すべての材料をシェイカーに入れ、氷とともによくシェイクし、冷やしたカクテルグラスに漉して注ぐ。ガーニッシュはコーヒー豆 3 粒。IBA は New Era のカテゴリーに掲載しています。
なぜエスプレッソマティーニは泡立つのですか
淹れたてのエスプレッソにはクレマがあり、その中に溶け込んだ CO2 とコーヒーの油分が閉じ込められています。氷とのハードシェイクがその油分に空気を打ち込み、きめ細かく安定した泡として保持します。だからショットは熱く新鮮でなければならず、数分経つとガスが抜けて泡は立ちません。新鮮なエスプレッソならドライシェイクは不要です。
エスプレッソの代わりにコールドブリューで作れますか
作れます。ショットの代わりにコールドブリュー濃縮液を約 60 ml。コールドブリューにはクレマがないので、リバースドライシェイクで泡を作ります。氷とシェイクし、氷を漉して、氷なしでさらに 10 秒シェイク。よりなめらかで酸味が少なく、エスプレッソマシンのないイベントでは格段に楽です。
エスプレッソマティーニはどれくらい強いですか
氷とのハードシェイクの後で約 18〜20 度。30 度近いドライマティーニより軽いものの、甘くクリーミーな味わいの印象より強い。約 120 ml の 1 杯で、酒精強化ワイン 1 杯とおおよそ同じ強さです。
カフェインは多いですか
エスプレッソ 1 杯分、およそ 60〜80 mg です。1 杯にちょうど 1 ショット入っているからで、コーヒーリキュールの分はごくわずか。ホテルバーは食後に勧めることが多く、希望があればデカフェのエスプレッソで作れます。
なぜコーヒー豆は 3 粒なのですか
3 粒は健康、富、幸福を表すという言い伝えで、イタリアのサンブーカの飲み方から借りた慣習です。Bradsell は 1983 年のオリジナルの Vodka Espresso にも 3 粒をのせていました。泡が約 20 秒落ち着いてから置くと、沈まずに浮きます。
どのグラスで出しますか。氷は入れますか
150〜200 ml の冷やしたクープグラスまたは V 字のマティーニグラスに、グラス内は氷なしのストレートアップで。グラスは必ず冷やすこと。ぬるいグラスは 1 分以内に泡を潰します。オリジナルの Vodka Espresso はロックグラスの氷の上に注いだもので、これも今なお有効なアレンジです。
イベント用に作り置きできますか
一部は可能です。ウォッカ、コーヒーリキュール、シュガーシロップを 50/30/10 で事前に混ぜ、1 杯 90 ml を注ぎますが、コーヒーは最後に加えます。100 名なら、エスプレッソを先に抽出して氷水で急冷し 2 時間以内に使い切るか、コールドブリュー濃縮液 60 ml に切り替えてリバースドライシェイクで泡を作るか。1 杯ずつシェイクは必要なので、バーテンダー 2 名で約 40 分を見込んでください。


